568. 夕月の風




夕月の風
ボクの故郷の本家は魚屋さんでちょっとした町のスーパーだった。
その頃、小学生だったボクの仕事はうなぎとりと客寄せ。
学校が終わると川と海の境のあたりに向かう。
うなぎとりといっても本家の兄貴が3日前に放り込んだウナギとり用の仕掛けのプラスチックの黒い筒の容器をを引き上げるのだった。
ボクはこどもながらに大人の仕事を任されたようで、俺ってかっこえーとか思ってた。
ボクのランドセルには内緒の仕事道具、
出刃包丁が入っていた。
そんな小学生、今じゃ考えられないが…
引き上げた容器のフタをあけ逆さにして地べたにトントンするとうなぎがでてくる。
ウナギの他にもうじゃうじゃと
うなぎは地べたをうねうね逃げる
ぼくは足でウナギを踏みつけウナギの脳天めがけ
出刃包丁を何度も突き刺す。
うねうねしながら逃げまくるので、
なかなかうまくいかない。
ボクとうなぎの本気勝負!
観念したうなぎを渡されていた袋に入れ魚屋に持ち帰ると、その場で即さばかれ、ほいっと渡される。
ボクはいつもの七輪で火をおこし、サイコーに旨いにおいを、どうだといわんばかりに、
夕方のお買い物客の人たちにパタパタするのだった。
へへん、よってらっしゃい、みてらっしゃい
いいにおいでしょ♪
夏の夕暮れとウナギの焼けるにおい
ボクの脳裏に刻まれてる夏の記憶…

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